シリーズ「合成生物学」第三回は、日本における合成生物学への取り組みをまとめてみようかと思います。前回の終わりにはそんなことは書いていませんでしたが、読者のみなさんが少しでも興味を持ってくださるところを書こうと考えた結果、これに行きつきました。 それにしても、いざこういった内容で書こうと思うと、資料というのは不足しているものです。その理由は、おそらく、日本における合成生物学への取り組みが、いまひとつ盛んになっていないからなのでしょう。
合成生物学のおこりは、制限酵素が開発された1978年にさかのぼります。これによって遺伝子組み換えの技術が実現し、合成生物学がまさしく始まったと言えます。後にクレイグ・ベンターがなっがーいDNA を創ることに成功し、それからというもの、この人工DNAを細胞に定着させる技術が発達していきます。そして2010年5月には、オリジナルの細胞からDNAを抜き取り、代わりに人工DNAを入れるという手法まで開発されています。
このような技術が、実用可能な段階に至っていることを示す例として、合成生物学のロボコン、iGEMを先日紹介しました。iGEMでは、主催者から2000ものDNAパーツが資料として与えられ、これを配列することによって、新しい細胞を創っています。
日本において、合成生物学が本格的に狼煙を上げたのは、2005年の「細胞を創る」研究会の発足によります。2007年には、日本の大学からもiGEMへの参加が行われるようになり、学部生から合成生物学の教育を行う体制が整備されたと考えていいでしょう。
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